私とバラタナティヤムの出会い

バラタナティヤムを始めたのは、神奈川県立高校の教員として働いていた時だった。英語を使うことの楽しさを教えたいと思って教員になったものの、現実は甘くなかった。英語教育のことばかり考えては悶々とした日々を送っていたが、自分の生活に変化がほしくなり、漠然と何か踊りをやってみたいと思った。その頃既に何回かインドに訪れたことがあり、文化にとても興味があったため、インドの古典舞踊をやってみようと思い立つ。横浜にいたため、「横浜 インド舞踊 教室」のようなキーワードでインターネット検索を行い、「エミマユーリ」氏のウェブサイトを見つける。横浜なら通うことができると思ったが、実際にお教室は移転しており自由が丘にあることを後になって知る。学校で担任を初めてもたせてもらった年、2017年にエミマユーリ氏からバラタナタティヤムを習い始め、自分の生徒たちを卒業させるまでは続けてようと決めていた。エミマユーリ氏のスタイルはカンチプラムスタイルで、優雅でしなやかな動きが美しい。彼女はとても魅力的なダンサーで観ている人を惹きつけている。表情が豊かで動きが優雅で私にとって憧れの存在だった。先生はその頃まだ経験が浅い私にもステージの機会をたくさん与えてくれた。ステージに出ることが好きな私は、イベントに向けて楽しくバラタナティヤムに取り組んでいた。先生に協力をしていただき、勤務校でバラタナティヤムの講座を総合的な学習の時間で開くことになる。生徒たちはバラタナティヤムの練習、インドの衣食住についての探求学習に意欲的に取り組んでくれた。エミマユーリ先生は、バラタナティヤムの楽しさや舞踊を使って様々な表現ができることを私に教えてくれた。先生の作るステージはいつも観客をインドの楽しい世界へと連れていってくれる、誰もが飽きずにワクワクしてしまうそんな空間だった。エミマユーリ先生の教えは、現在も私がステージ構成を考える時に大変役に立っている。今もとても感謝している。

 転機が訪れたのは2020年、コロナが流行りだした頃だった。卒業生を出して、自分も神奈川県の教員を辞職し、インドに心理学を学びに行く予定だった。退職する直前にコロナで世間がざわつき始める。インドに入国できなくなり、計画していたインド留学はできなくなってしまった。とはいえ、そこまで落ち込むこともなく、その頃から既に付き合っていた彼(現在の夫)のいる静岡県の森町に住むことになり、のんびりとした楽しい毎日を送る。教員の時は睡眠不足で辛かったのだが、遅くまで寝ることができることが嬉しかった。家庭菜園をやってみたり、和菓子を食べたり田舎生活を満喫していた。森町には商業施設がないため、時間がある時に、畳の部屋でバラタナティヤムを踊り始める。エミマユーリ先生にオンラインで引っ越してからは教えていただき、シヴァの演目を楽しく学んでいた。2020年の春から数ヵ月エミマユーリ先生にオンラインレッスンをしてもらっていたが、先生が忙しくなり、そこからは数ヵ月間自主練習の日々が続いた。コロナで外出もできなくて退屈だったため、Youtubeで自分の踊りやインドの文化について発信を始める。その頃の自分の踊りは本当にまだまだだったが、振付を考えることが楽しくてしょうがなかった。

 ただ、やはり指導してくれる方が必要だと思い、チェンナイの先生を探し始めた。Google Mapを使い「Bharatanatyam school」と検索し、一つひとつスクールのウェブサイトを見ていった。数多くある学校の中にTharangineeを見つけ、現在の師匠Smt.Shobana Bhalchandra氏の写真を発見する。彼女の表情がお茶目で可愛らしく、直観でご縁を感じたのだった。海外でもワークショップを行ったり、アビナヤ(感情表現)を得意とすることが分かり、早速師匠にメールを送った。何週間経っても返信は全く来なかった。いきなり私みたいな日本人が習いたいなんてそんな簡単にはいかないよな~と少し諦めていた。ただ、そんな時にYoutubeで友人になった南インドの方が、「今日チェンナイに行くから、Shobanaさんに会ってきて、Shokoさんが習いたいと言っていることを伝えるよ。」と言ってくれたのだった。今も彼には本当に感謝している。

 そのおかげでメールでつながり、2021年2月から師匠とのオンラインレッスンが始まる。初回のオンライン授業ではtatta adavu(足のステップ)にひたすら取り組んだ。「Shokoはまず全部adavu(基本の型)をやり直す必要がある。」と告げられしまう。それもそのはず以前のスタイルはカンチプラムスタイル、Shobana氏のスタイルは直線的なカラクシェトラスタイルで、特徴が全く異なる。最初は正直なところ、なめらかなカンチプラムスタイルが好きだったため、カラクシェトラスタイルということを知りちょっとなあと思ったこともあった。ただ自分で師匠を決めた以上、何があってもブレることなく、師匠についていこうと決心する。私のポリシーとしては、師匠に注意されたことは次回までに完璧にしておくことだった。意外にも練習をしっかりし、言われたことをすぐに直す私を見て、師匠も熱心にオンラインで教えてくれた。基礎練習をオンラインで学び終えるのに、少なくとも6カ月はかかった。以前のスタイルと微妙に違うことが多く、それが逆に難しく、型を直すのに時間がかかった。全ての基礎の動きを細かく学び直したため、動き全体に安定感が出て、自分の踊りが改善されていくのを日々感じることができた。Shobana氏の助言は的確で細部まで気づいたことを伝えてくださる。そのおかげで、自分が現在生徒さんに伝える時にも、自信をもって何が正しくて、身体をどう使うべきかをアドバイスできている。

続きは次回♪

ありがとうございました。

Maya Shoko

南インド古典舞踊 バラタナティヤム Bharatanatyam

0コメント

  • 1000 / 1000